SOCIETY FOR HISTORICAL CONSULTING

会長あいさつ

 

時代考証学会 会長
大石 学(おおいし まなぶ)

時代考証学会への御招待

時代考証学会は、2009年に設立されました。

「時代考証」とは何か?
辞書などには、「映画・演劇・テレビなどで、衣装・道具・装置などで、服飾・調度などが設定された時代に適合しているかどうか調べること」(『広辞苑』)などと、説明されてきました。しかし、現実は、さまざまな分野の時代考証が求められています。そこで、あらためて時代考証を定義すると、次のようになります。(1)時代考証とは、歴史的事実(資料)の提供を通じて、歴史作品(テレビ、ラジオ、映画、演劇などの時代劇、歴史小説、コミック、アニメーション、ゲームなど)の制作に協力するため、(2)歴史学、地域史、古文書学、文学、言語学、美術史、建築史、風俗史、生活史、被服史、食物史、医学史、遊戯史、法制史、経済史、音楽史、民俗学など多様な学問分野の研究成果を総合する、というものです。これをまとめるならば、「歴史学など諸学問を総合して歴史作品の制作に協力する作業」ということになります。

では、「時代考証学」とは何か。こちらは「時代考証」の定義をふまえて、(1)時代考証の基礎となる諸学問を総合し、歴史作品の制作に寄与する、(2)総合学としての時代考証学は、諸学問の研究成果にもとづくとともに、諸学問の新たな発達に寄与する、(3)時代考証学は、(1)(2)を通じて市民社会の発展に寄与する、と定義しています。すなわち、「時代考証学」とは、「歴史作品、学問、市民社会に寄与する総合学」として定義しています。

さらに、「時代考証学会」については、(1)時代考証学の普及・発展をめざす、(2)時代考証にかかわる諸分野の人々、関心をもつ人々によって構成される、と規定しています。すなわち、時代考証学会は、「時代考証学の普及・発展をめざす、市民と諸分野の専門家の組織」と考えています(大石学「『時代考証学』の可能性」大石学・時代考証学会編『時代考証学ことはじめ』東京堂出版、2010年)。

日本・世界を取り巻く環境が大きく変わりつつある現在、私たちは、歴史作品といかに接するのか、歴史作品は今後どのように作られるのか、皆さんとともに考え、語り合いたいと考えています。本会の活動は、テーマを掲げた年一回のシンポジウム、自由なテーマで年数回開催されるフォーラム、それらの成果の出版を中心としています。現在のところ会員制度はとっていません。気軽にシンポジウム、フォーラムに参加し、出版物を読んでいただければ幸いです。